在庫ロスとは?原因やロス率の計算式、在庫ロスを削減する方法
目次
工場や倉庫、店舗を管理する現場担当者にとって、「在庫ロス」は利益を圧迫する重大な問題です。
「廃棄してしまった在庫」「売るものがないための機会損失」は、本来、得られるはずの利益を奪い、企業の経営に深刻な影響を与えます。
在庫ロスを減らすことは、単なる「ムダの削減」ではなく、企業の収益力向上に直結する重要な経営課題です。
本記事では、在庫ロスの基本的な定義から、ロスを生み出す原因と種類、正確なロス率の計算方法、そして現場で今すぐ取り組める在庫ロスを削減する方法について詳しく解説します。
在庫ロスとは?
在庫ロスとは、在庫不足や過剰在庫などによる企業の利益減少を指します。
ここでは、在庫ロスの基本的な定義と、企業経営に与える具体的な影響について見ていきましょう。
在庫ロスとは
在庫ロスとは、在庫不足や過剰在庫などにより企業の利益が減少することです。在庫ロスは、主に以下の2つの側面から損失を生み出します。
• 在庫不足による損失
• 過剰在庫による損失
在庫不足による損失は、在庫があれば顧客が購入し利益を得られたはずが、在庫不足により販売機会を逃してしまう事象を指します。
また、過剰在庫による損失は、過剰在庫の場合に賞味期限切れや品質劣化などで破棄することで損失が生じることです。
在庫ロスが企業に与える影響
在庫ロスが多い場合、企業の経営を圧迫するおそれがあります。廃棄ロスは、商品の仕入れや製造にかかった費用(原価)が丸ごと損失となる直接的なダメージです。
一方で機会ロスは、売上を逃すことで本来得られたはずの粗利益を失う潜在的な損失です。競合他社への顧客の流出により、将来の顧客離れにもつながるリスクがあります。
裏を返せば、在庫ロスの削減は、企業の収益と利益向上に直結します。収益向上の達成は、正確な在庫管理によって在庫の動きを正確に把握し、管理を徹底することが重要です。
在庫ロスの種類と原因
在庫ロスは、発生する原因と内容によって大きく3種類に分類されます。それぞれの種類と、その裏に潜む原因を理解することが、ロス削減の第一歩です。
廃棄ロス
廃棄ロスは、商品が売れ残り、賞味期限切れや品質劣化によって値引きや廃棄せざるを得なくなったことで発生する損失です。廃棄費用がさらに損失を拡大させる場合もあります。
【廃棄ロスの主な原因】
• 不正確な需要予測
• 過剰な安全在庫
• 管理ルールの不徹底
不正確な需要予測は、担当者の勘や経験に頼った発注で、需要を上回る過剰な仕入れをしてしまうことです。は、欠品を恐れるあまり必要以上に多くの在庫を確保してしまうため、過剰な安全在庫につながります。過剰な安全在庫により、適正在庫を維持することが難しくなるでしょう。
そして、管理ルールの不徹底は、「先入れ先出し」ができておらず、古い在庫が期限切れになってしまうことです。
機会ロス
機会ロスは、顧客の購入したいタイミングで商品がなく、販売機会を逃したことで、本来得られたはずの利益を失うことを指します。
顧客離れにつながる可能性も含み、将来の売上に影響する間接的な損失となります。
【機会ロスの主な原因】
• 過小な需要予測
• 長いリードタイム
• 不正確な在庫データ
機会ロスの原因として、メディアでの紹介を読み切れず在庫が不足してしまう「過小な需要予測」が挙げられます。あらかじめ顧客のニーズを考慮した在庫管理ができていれば、欠品や不足による機会ロスを防ぐことができます。
また、長いリードタイムによる機会ロスも深刻な問題です。発注から納品までの時間が長く、急な需要増に対応できない場合は、機会ロスに繋がりやすいのではないでしょうか。
そして機会ロスの背景として、そもそも在庫管理自体がおろそかになっている場合も考えられます。上述した「不正確な在庫データ」の一例には、データ上は在庫があることになっており、発注をかけなかったために欠品するケースもあるでしょう。
棚卸ロス
棚卸ロスは、帳簿上の在庫数と、倉庫や店舗にある実際の在庫数が合わないことで発生する損失です。
「あるはずの在庫」がないため、販売機会の損失にもつながります。在庫の実態が不透明になる原因となるため、早急に解決すべき課題です。また、万引きなどによる盗難も棚卸ロスの原因となることがあります。
【棚卸ロスの主な原因】
• 入力・カウントミス
• 伝票処理の遅れ・漏れ
• 破損・汚損・紛失
入力・カウントミスの一例としては、在庫数を数え間違えたり、システムに数量を打ち間違えたりするヒューマンエラーが挙げられます。
伝票処理の遅れ・漏れは、入出荷時に伝票を処理し忘れ、データが更新されず実際の在庫とズレが生じることを指します。
また、破損・汚損・紛失は、在庫の保管状況が悪く商品が破損したり、どこにあるかわからなくなったりすることです。
在庫ロスの計算方法
在庫ロスの実態を正確に把握し、改善の効果を測定するためには、計算式を使った定量化が不可欠です。
在庫ロスは企業の利益に直結する課題ですから、勘定を明確にすることが改善の第一歩となります。ここでは、廃棄ロスと値引きを含めたロスの金額とロス率の計算方法を見ていきましょう。
在庫ロスの計算式
在庫ロスを評価する際は、廃棄された分だけでなく、値引きによって失われた利益も含めて計算します。
• ロス金額=(販売金額)×(ロス個数)+(値引き金額)×(値引き個数)
• ロス率(%)=ロス金額÷売上高×100
「ロス金額」は、廃棄された個数(ロス個数)と、値引き販売された個数(値引き個数)それぞれが、本来いくらの売上を生むはずだったかを合計することで算出されます。この金額こそが、企業にとって直接的な損失となる部分です。
【具体例】
以下の例でロス金額を計算してみましょう。
• 商品Aの定価:1,000円
• 廃棄された個数(ロス個数):10個
• 値引き販売した個数(値引き個数):20個(値引き額:100円)
ロス金額=(1,000円 × 10個)+(100円 × 20個) ロス金額= 10,000円 + 2,000円 = 12,000円
上記の例では、計12,000円の利益を失ったことになります。販売機会を逃した部分(廃棄)と、単価が低下した部分(値引き)の両方から損失を捉えることが重要です。
ロス率の計算
「ロス率」は、算出したロス金額が全体の売上高に占める割合を示します。ロス率を算出することで、経営への影響を客観的に評価できます。
【具体例】
• ロス金額:12,000円
• 月間売上高:3,000,000円
計算式に当てはめると、
ロス率(%)= 12,000円(ロス金額) ÷ 3,000,000円( 月間売上高) × 100 = 0.4%
このように定量化することで、目標とすべきロスの基準を明確に設定し、継続的な改善を行うことが可能になります。
ロス率をモニタリングすることで、在庫管理の効率化に向けた取り組みの効果も把握しやすくなるでしょう。
在庫ロスを削減するには?
在庫ロスの種類と原因を理解したら、次は具体的な削減方法を実施する段階です。
在庫ロスを恒常的に減らすためには、「予測精度の向上」「現場の管理ルールの徹底」「人的ミスの排除」の3つの視点が重要になります。
予測と発注の精度を高める
廃棄ロスや機会ロスの多くは、需要と供給のミスマッチが原因です。
需要と供給のミスマッチを解消するため、過去の販売データや季節トレンドといった詳細な情報を分析し、需要予測の精度を高めることが重要になります。
単なる経験に頼るのではなく、AI技術を活用することで、データに基づいた客観的な予測を行うことで、仕入れの過剰や不足を抑制できるでしょう。
また、欠品や過剰在庫を防ぐための重要な管理指標である「発注点(安全在庫+調達期間)」を品目ごとに適切に設定し、定期的に見直しを行うことで、過不足の発生を未然に防げるでしょう。定期的な見直しにより、在庫量の最適化が実現します。
庫内作業のルールを徹底する
倉庫内での管理が徹底されていなければ、在庫のズレ(棚卸ロス)が高頻度で発生してしまいます。この棚卸ロスを防ぐためには、現場での作業ルールの徹底と標準化が不可欠であり、その重要性は非常に高いです。
具体的には、品質劣化を防ぐ「先入れ先出し」の徹底はもちろん、在庫の保管場所を固定するロケーション管理などを確立し、作業者の習熟度に関わらず誰が作業しても同じ品質を保てる体制を構築することが重要です。作業の効率が向上し、数量のミスも減ります。
在庫の状態を正確に保つことは、帳簿と実在庫の一致を図り、在庫データの信頼性を高める基盤となります。この基盤が整うことで、発注や出荷の判断ミスも大幅に削減され、改善が進むでしょう。
現場のデジタル化で人的ミスを防ぐ
棚卸ロスの大半は、入力・カウントミスなどの人的ミスが原因です。人的ミスを根本から排除するためには、入荷・出荷時の検品や実地棚卸といった現場作業からデジタル化に着手すると効果的でしょう。
在庫管理システムの導入はその1つですが、具体的なツール活用も重要です。ハンディターミナルは、バーコードを読み取ることで入出荷検品のような定型作業の効率を大幅に向上させます。
また、より柔軟な情報入力が求められる場面、例えば品質チェックや破損の記録の際には、現場帳票の電子化が有効です。
タブレットを使用して写真付きの検品記録を残したり、数量だけでなく在庫の状態も詳細に記録する実地棚卸を行ったりすることで、現場の状況を正確にデータとして記録できます。
現場の状況を正確にデータとして記録しておけば、勘や経験に頼らない、データにもとづいた的確な在庫管理が実現しやすくなるでしょう。
i-Reporterで在庫ロスを解消し、利益を生み出す
在庫管理における多くのロスは、「帳簿上の在庫」と「現場の実在庫」のズレから始まります。
その根本原因である検品や棚卸におけるヒューマンエラーをなくし、在庫データの精度を向上させることが、ロス削減の最大のポイントです。
現場帳票システム「i-Reporter」は、入荷・出荷検品や実地棚卸といったあらゆる庫内作業をデジタル化し、手書きやExcelへの転記作業をなくし、写真付きの報告書も現場で簡単に作成できます。
現場で入力された正確なデータがリアルタイムで共有されます。リアルタイムでのデータ共有により、信頼できる在庫データの基盤が構築されるでしょう。
棚卸ロスの大幅削減だけでなく、正確な情報に基づく発注により、機会ロスや廃棄ロスの削減にもつながるのではないでしょうか。
参考サイト:
製造現場の物流・倉庫業務を徹底効率化! 入出庫・棚卸・ピッキング等の業務を 省人・効率化できる 現場帳票電子化システム

