在庫引当とは?目的や在庫の管理方法、効果的に行うポイントを解説
目次
工場や倉庫、店舗で在庫管理を担当する現場担当者にとって、「在庫引当」は納期遵守と販売機会を確保するために欠かせない業務です。
しかし、「引当ミスで欠品が発生した」「在庫数がデータと合わない」といった問題に直面することも多いのではないでしょうか。在庫引当の精度は、顧客満足度と企業の利益に直結する重要な要素です。
本記事では、在庫引当の定義から、行う目的、主な管理方法、そして引当の精度を高めるポイントまで徹底解説します。
在庫管理の効率化とサービスレベルの向上を目指す現場の管理者は、自社の在庫管理体制の見直しに役立ててください。
在庫引当とは?
在庫引当は、在庫管理における基本であり、受注と出荷の整合性を保つための重要な手法です。ここでは、その定義と計算の考え方について解説します。
在庫引当とは
在庫引当とは、顧客から注文が入った時点で、将来の出荷に備えて、倉庫にある実際の商品(実在庫)を確実に確保しておく在庫管理手法です。
受注確定分をあらかじめ取り置き(引当)し、ほかの注文に割り当てられないようにすることで、注文に対して商品を確実に届けられるようにします。これは、納期の遵守と顧客の満足度向上に直結する重要な業務で、在庫引当が持つ本質的な役割です。
在庫引当の考え方
在庫引当は、実在庫と有効在庫を用いて管理されます。正確な在庫引当を行うことで、販売と出荷の計画をスムーズに進めることが可能になります。
実在庫とは、倉庫や店舗に物理的に存在している在庫の総数です。実際に商品が動くタイミングで数が変動します。
そして、有効在庫は実在庫からすでに取り置きされた「引当済み」の在庫数を差し引いた数で、新しい顧客に販売可能な在庫の量を示します。有効在庫は販売担当者が受注を受ける際、最終的に確認するべき在庫数となります。この引当済在庫の正確な把握が、欠品を防止に有効です。
在庫引当の計算方法
在庫引当を行うことで、企業が販売に回せる在庫を明確に把握できます。基本的な計算方法は以下の通りです。
有効在庫数=実在庫数-引当数
「有効在庫数」は、現在の実在庫数から、すでに注文が確定し出荷が待たれている「引当数」を引くことで算出されます。
この有効在庫数がプラスである場合、新たな受注を受け付けられる在庫の量を示します。ここからは計算式を用いた具体例をご紹介します。
| 商品A(個) | 商品B(個) | |
| 実在庫数 | 100 | 50 |
| 引当数(受注済み) | 30 | 60 |
| 有効在庫数 | 70(100-30) | -10(50-60) |
商品Aは、実在庫100個から引当数30個を引いて、有効在庫数は70個となり、さらに70個まで受注が可能です。販売担当者は、この情報に基づき自信を持って受注を確定させることができます。
一方、商品Bは、引当数が実在庫を上回っているため、有効在庫数はマイナス10個という状況です。この場合は二重引当の状態を示唆しており、引当数を減らすか、早急に追加の仕入が必要となります。この計算をリアルタイムで行うことが、販売機会の損失を防ぐポイントです。
在庫引当を行う目的
在庫引当は、単なる在庫の把握に留まらず、企業の信用と利益を守るために不可欠な業務です。ここでは、在庫引当がなぜ重要なのか、その目的を掘り下げます。
納期を遵守するため
顧客からの注文に対して必要な在庫を事前に確保し、他の注文や用途に流用されないようにすることが、在庫引当の第一かつ最も重要な目的です。
確実に商品を出荷できる状態を作ることで、納期遅延による顧客の信用失墜や取引中止といったリスクを未然に防ぎ、企業の信頼を維持し強化します。
計画的な引当は、サプライヤーとしての責任を果たすための基盤となるでしょう。
有効在庫数を正確に把握するため
実在庫数から出荷予定の在庫数を差し引くことで、販売可能な有効在庫数を正確に把握できます。
この正確な把握ができていないと、実際には在庫がないのに受注してしまう「二重引当」が発生し、在庫が不足して販売機会を逃す「機会損失」につながります。また、逆に過剰な在庫を抱えて保管コストが増大するリスクも生じるでしょう。
正確な有効在庫数は、販売戦略と発注の判断を支える重要な情報源です。販売可能な在庫を、特に引当在庫と区別して呼ぶ場合もあります。
在庫管理を効率化するため
データにもとづいた計画的な引当は、在庫管理の精度を全般的に向上させることができます。
引当を自動的に行うシステムや仕組みの導入により、手作業によるミスやタイムラグが大幅に減り、在庫管理の効率化につながるでしょう。
管理工数が削減される分、担当者は在庫の品質チェックやレイアウトの見直しといった、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。これは、在庫引当販売管理の全体の流れを最適化する施策です。
在庫引当の主な管理方法
在庫引当の管理方法は、事業規模や取扱商品によってさまざまです。低コストで始められる方法から、高精度な管理が可能なシステムまで、それぞれの特徴を理解しましょう。
手書き・台帳での管理
注文や入出庫時に、ノートや管理台帳に手書きで記録していく方法です。在庫アイテム数が少ない場合に使用されることが多いです。
メリットは、導入コストがかからない点や、電源や端末を使用しないため、どんな場所でも利用できる点が挙げられます。
一方、デメリットとしては、記入ミスや計算間違いが起こりやすく、正確性に課題がある点です。また、リアルタイム性に欠ける(複数の担当者が同時に確認・更新できない)ため、情報共有に遅れが生じやすく、集計に時間がかかる点も挙げられます。
Excel(エクセル)やスプレッドシートでの管理
表に関数や数式(SUMIFS、VLOOKUP/XLOOKUPなど)を設定し、有効在庫数を計算する方法です。関数やマクロを使えば、ある程度の自動化も可能です。在庫引当のエクセルでの管理は、導入の手軽さから小規模な事業者に多く採用されています。
メリットは、多くのPCにインストールされており、追加コストが少ない点や、関数を使えば、有効在庫の計算などを自動化できる点が挙げられます。また、ファイル共有機能を使えば、複数人での閲覧が可能になるでしょう。
一方、デメリットとしては、同時編集ができない・しにくいため、入力のタイミングがずれると在庫数に差異が生じる点です。さらに、作成者以外には理解しづらく属人化しやすい点もデメリットとして挙げられます。データ量が増えると動作が重くなるため、ファイルの破損リスクも考えられますね。
在庫管理システム・WMS(倉庫管理システム)での管理
在庫管理に特化した専門のソフトウェアやクラウドサービスを利用する方法です。
受注システムや企業の基幹システム(ERP)と連携し、在庫引当を自動化し在庫数をデータ化して取り込み、システム上で在庫数の変動を管理します。
メリットとしては、入出荷や受注時の入力や転記の際の人的ミスが削減できる点、実際に現物を確認しなくてもリアルタイムな在庫数を正確に把握できる点、そして複数店舗やECサイトの在庫を一元管理できる点も大きなメリットです。
一方、デメリットとしては、初期費用やランニングコストが発生する点や、自社の運用に合わせた設定や、従業員のトレーニングが必要となる点が挙げられます。
在庫引当を効率的に行うポイント
在庫引当の精度を高めることは、そのまま顧客満足度と利益率の向上につながります。引当を効率的に行うための重要なポイントを押さえましょう。
在庫引当の運用ルールを明確にする
在庫引当に関するルールが曖昧だと、担当者によって判断が異なり、非効率やミスの原因となります。引当の基準や手順を社内で統一したうえで、販売や出荷に関わる関係部門との共有が重要です。複数の倉庫を持つ場合は、ルールの明確化が欠かせません。
• 引当のタイミング
• 優先順位の設定
• 在庫の選択基準
引当のタイミングは、注文が入った時点で引当を行うのか、入金が確認された後に行うのかなど、引当を実施する明確なタイミングを定めます。
優先順位の設定では、在庫が不足しそうな場合に、どの注文を優先して引き当てるかのルールを定めます(例:大口顧客の注文、納期が早い注文など)。
そして、在庫の選択基準では、複数の保管場所に同一品目がある場合に、どこの在庫から引き当てるかを決めます(例:先入先出を優先、出荷に近い場所を優先など)。
定期的に棚卸を実施する
管理上の在庫数と実際の在庫数には差異(ズレ)が生じる場合があります。データの入力ミスや商品の破損・紛失などにより発生するこのズレは、誤った在庫引当の直接原因です。
定期的に実地棚卸を行うことで、在庫データの正確性を維持し、引当業務もスムーズに進められるようになります。
デジタルツールやシステムを導入する
手書きやExcelでの管理には限界があり、ミスやタイムラグを防ぐのは困難です。
在庫管理システムや倉庫管理システム(WMS)の導入、ハンディターミナルの活用など、デジタルツールを導入することが抜本的な解決策となります。
システムを活用する際には現場からの情報が迅速かつ正確に連携されることが重要であり、現場帳票をデジタル化・連携することで、リアルタイムな在庫反映とデータ精度の向上を実現しやすくなるでしょう。
在庫引当の精度を高める現場DXの進め方
在庫引当の精度は「元となる在庫データが、いかに正確か」が重要になります。紙の台帳やExcelで日々の入出荷や棚卸を管理していると、記入ミスや更新のタイムラグが発生しがちです。
この小さなズレが、誤った在庫引当につながり、結果として販売機会の損失や顧客からの信頼失墜を招く可能性もあります。
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